大切な人に感謝したい、謝りたい…そう思っていざ手紙を書いたけど、何か物足りない…そんな経験はありませんか。
今回は現役国語教師の筆者が、作文のコツも踏まえながら、相手を感動させる手紙の書き方のポイントを伝授します。
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日本語には素敵な言葉や表現が数多くあります。しかし私たちは話すとき、「すごい」「美味しい」「かわいい」など簡単な言葉しか使いません。
話すときは表現の丁寧さより、テンポの速さが大事だからです。
しかし手紙の場合、このような言葉だけだと、幼稚な印象を与えます。
そこで、次のような表現に言い換えてみてはどうでしょう。
(例)
× この前いただいたスイカ、とても美味しかったです。
↓
○この前いただいたスイカは、口の中全体に甘みが広がって、思わず顔がほころんでしまいました。
直接感想を伝えるよりも、そのときの表情を書いたほうが、具体的にイメージが湧きますよね。
他にも「楽しかった」は「飛び跳ねるほど」など、動作で表現する方法もあります。
小説家になったつもりで、直接的な表現を避け、表情や動作で感想を伝えるようにしましょう。
中学生のとき国語の恩師に言われたのは、「いつも」「いろいろ」「たくさん」「本当に」「とても」など程度を表す言葉は、必ず具体的な内容に言い換えなさい、ということでした。
私たちはつい、「いつもありがとうございます。」「いろいろと申し訳ございませんでした。」などの表現を、あまり考えずに使ってしまいがちです。
しかし、これらは誰にでも使える言葉ですので、丁寧さに欠けます。次のように書き換えてみてはどうでしょう。
(例)
× いつもありがとうございます。
↓
○丁寧にご指導くださり、ありがとうございました。
また「優しい」「明るい」など相手の性格を褒めたい場合も、直接表現を避け、その時のエピソードを順序立てて具体的に書くと、より心に響くでしょう。
(例)
× 部長の優しさが、私の心の支えになりました。
↓
○入社したときの私は、何も分からず、ただうろたえているだけでした。そんなときに部長は、私の話を夜遅くまで聞いてくださり、なぜ私が理解できないのかという原因を一緒に考えてくださいましたね。そのことが、私の心の支えになりました。
いつ、どのようなことをしてもらったのか、自分はどう思ったのか、を意識して書きましょう。
具体的であればあるほど、自分のためだけに書いてもらったという喜びを感じさせることができると思います。
注意したいのは、エピソードを盛り込みすぎないことです。あまり多く書きすぎると、一つ一つの話の重みが薄れます。
自分が相手に一番伝えたいことは何かを決めて、そのエピソードを深く掘り下げていくのが良いかと思います。
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上記の表現方法を踏まえたうえで、最後に文章構成についてお伝えしたいと思います。
そのコツは、過去、現在、未来、という展開にして書くことです。
@過去
以前してもらったことについて「ありがとう」「ごめんなさい」などの定型文ではじめ、その後に具体的なエピソードを書くようにします。
A現在
相手との思い出を受けて、自分が今どのような気持ちになっているのかを書くようにします。
B未来
自分はこれからどうするか、相手と自分との関係性はどうありたいのかを書くようにします。
この順で書くと、過去の思い出で心温まる中、未来にも素敵なことがあると予感させるような、相手に希望を与える手紙にすることができます。
最後に、@〜Bのステップをふまえた例をのせます。
(例)
@
ご卒業おめでとうございます。
サークルでは親身に相談に乗ってくださり、ありがとうございました。
去年の学園祭では、私たちの学年は役割分担でもめてしまい、ご迷惑をおかけしました。そのときも先輩は、私たち一人一人に話を聞いて、それぞれの主張を否定せず、また考えを押し付けることもせず、サークル全体にとって何がいいのかを考えるように、ということをおっしゃっていましたね。先輩のおかげで、それぞれがお互いのことを考えて行動するようになり、学園祭も成功させることができたと思います。
A
あのときおっしゃった先輩の言葉は、サークル以外のことでも、私の道しるべになっています。
そんな先輩が卒業されてしまうのは心細いですが、先輩の希望していた、広い世界に旅立たれることを、自分のことのように嬉しく思います。
B
私も先輩のように、後輩に慕われる存在になれるよう、努力していきます。
これからは新しい場所でご活躍なさってください。先輩なら、会社の方々から信頼される、素敵な社会人になれると思います!
またもしお時間があれば、学園祭や飲み会にも顔を出してくださいね。
想いを伝えるには、直接話したり、パソコンやスマホでメッセージを送ったりするほうが手っ取り早いでしょう。
手紙は、便箋や筆記用具を選んだり、文章の内容を推敲したりと、いくつもの手間がかかります。しかし、だからこそ最も相手に誠実さが伝わる表現方法だと私は思います。
文章表現力や構成力はあくまでテクニックです。
一番大事なのは、どれだけ相手のために手間をかけたか、相手とどんな関係を築きたいかが伝わることなのです。
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