脳出血や脳梗塞、くも膜下出血など脳血管障害は年々増加しています。
体に麻痺が残った場合、装具と言われる道具を使います。腕から足に使うものまでありますが、今回は歩くために使う足に使う装具を中心に解説します。
現役理学療法士が歩くための装具とは何か?どんなふうに使うのか?を解説します。
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装具の対象となる人は、脳血管障害により運動障害(片麻痺)が起こったことで歩行障害が起こった人です。
装具の役割は、歩行に必要な機能の代償や補完することです。
つまりは、歩けなくなった原因に対してどんな運動が出来るようになれば歩けるか考えます。その穴埋めの機能として装具が使用されます。
さらに装具は、治療用装具と更生用装具に分かれます。
治療用装具は、入院中に用いることで歩行障害を改善するために使うものです。
更生用装具は、主に退院後に使われるものです。
歩行障害の回復が終了した後も、麻痺により歩行障害が残存した患者さんに対して最低限歩けるために必要な機能を備えた装具のことです。
【装具の素材】金属製かプラスチック製
【装具の種類】長下肢装具か短下肢装具
まず素材の違いから説明します。
金属製かプラスチック製の違いは、麻痺の重症度で使い分けます。
麻痺が重度であるほど、金属製のものを使用します。反対に麻痺が軽度の場合はプラスチック製の装具を使用します。
次に装具の種類の違いについて説明します。
脳梗塞などの脳血管障害を発症した直後は、麻痺が重症化しているため全身に力が入らないことがほとんどです。
そこで麻痺で支えることが出来ない分の体重を支えるために、強固な作りが必要となります。
その時に使うのが長下肢装具です。かなり大きい装具であり、股関節から足先まで金属の支柱で出来ています。
次に発症後より時間が経過すると麻痺の程度は軽度になっていきます。
その時に使うのが短下肢装具です。
見た目にも膝下の装具であり、普通の靴と一緒に使ってもらうことが出来ます。
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装具を使ったリハビリテーションのポイントは、使用目的を理解することです。
なぜなら、脳血管障害を発症した早期には長下肢装具、麻痺が回復すれば短下肢装具によって治療目的が違うためです。
発症初期は、麻痺が重度であり患者自身の力では立てれません。そのためまずは長下肢装具のような支持性が強い装具を使い立てる練習をします。
自分で立つことが出来れば次は歩く練習です。
しかし立ち始めたばかりの足の筋力では、足を前に振り出すことが出来ない人が多いため、まず歩くときに必要な筋力をつけるためにも長下肢装具を使用します。
また、この時期は踏ん張ると膝が折れてしまうため、膝を折れないように支える機能がある長下肢装具が使われます。
さて、膝折れがなくなると、次は短下肢装具を使用したリハビリテーションを行います。
短下肢装具は、支持する機能よりも歩くときの筋肉の使い方とタイミングを患者さんに覚えてもらうために使うものです。
具体的に言うと、歩けるけど麻痺側の足先が引っかかる人には、「このタイミングで足を出してください!」と声掛けをするリハビリスタッフもいると思います。
しかし患者さんからすればそんなことを意識しながら歩くことは難しいと思われると思います。
そこで装具を使うことで、患者さんが意識しなくても正しい歩き方になるように修正するのです。
正しい歩き方を続けることで歩くために、股関節・膝関節・足関節についている筋肉がお互いにタイミングよく、必要なだけのパワーを発揮できるようになります。
スポーツを始めた時、最初は出来ないけど練習をしていくうちにコツをつかんで出来るようになりますよね。
まさにそれと同じことを行うことで、麻痺によって歩けなくなった人が再び歩けるようになるのです。
長下肢装具を長く使いすぎると、足の振り出し方が分からなくなる人が多くクセになります。
そうなるとクセを修正するのは1から覚えるよりも難しいので、正しい歩き方が出来るようになるまでにかなりの時間がかかります。
そのため、長下肢装具から短下肢装具に切り替えるタイミングを見極めることも装具を使ったリハビリテーションでは非常に重要です。
どうでしたか?装具がどういったものか雰囲気だけでも伝わりましたか?
中々普段目にすることがない分、聞きなれない言葉が多くて戸惑いもあったと思います。
脳血管障害は年々患者数が増えている病気なので、そのリハビリテーションがどういった目的で行っているか知れば、治療に対する不安が少しでも軽減すると思います。
読者の方の不安を少しでも和らげることが出来たなら幸いです。
参考文献
1、日本リハビリテーション医学会「義肢装具のチェックポイント第7版」,2011/医学書院
2、柳澤健「運動療法学改定第2版」,2011年/金原出版株式会社
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